韓国の伝統建築を巡る旅 2025年10月14日より
四度目の韓国。
これまではすべてレミングハウスの研修旅行として訪れてきたが、今回は初めて〈ikken〉の研修旅行として、設計スタッフ、家具メンバー、そして現場監督の山崎さん・松田さんとともにソウルを訪れることになった。
今回の旅のいちばんの目的は、恩師である建築家・中村好文さんのソウルでの展覧会をお手伝いすること。
設営の前日、私たちは韓国の建築家・趙鼎九(チョ・ジョング)さんが率いる〈guga都市建築〉の展覧会を訪ねた。案内してくださったのは、同事務所の米田沙知子さんと趙所長ご本人である。
展示では、韓屋(ハノク)や路地の現況を丁寧に実測し、図面化・模型化して都市の成り立ちを可視化していた。その膨大なサーベイの力と、韓屋の特徴である「庭(マル)」を活かした設計の姿勢に強い感銘を受けた。都市を読み解き、そこから設計を紡ぎ出す眼差しの確かさに、多くを学ばせてもらった。
二日目はいよいよ展覧会の設営。
家具スタッフ3名、現場監督2名、そして私を含めた6名で、主に什器の組み立てなどを担当した。展覧会のタイトルは――
「住宅建築家・中村好文 普通でちょうど良い」。
中村さんが大切にされている“普通”という言葉。その奥にある思想を思い返しながら、準備を進める時間はとても豊かなものだった。
設営の合間には、韓国を代表する建築家・故キム・スグン氏の旧事務所〈ARARIO MUSEUM〉を訪ねる。キム・スグン氏は、かつて日本で建築家・吉村順三氏に師事した人物でもある。
設計事務所から美術館へと姿を変えた建築は、不思議な落ち着きをまとい、静かに時を刻んでいた。
さらに足を伸ばして、昌徳宮(チャンドックン)へ。
華やかな宮殿建築の数々を横目に、私の心を引いたのは敷地内の楽善斎(ナクソンジェ)だった。簡素ながらも伸びやかなスケールを持ち、ヒューマンスケールの心地よさに満ちた建築である。
続いて訪れた雲峴宮(ウンヒョングン)もまた、韓国の宮殿建築でありながら質素で、そこにどのような暮らしがあったのか、静かに想像を促してくれる空間だった。
宿は、中村さんの展覧会場にもほど近い、伝統的な韓屋(ハノク)。
韓屋が多く残る北村の近くを歩き回り、街並みをゆっくりと味わった。買い出しに出た先でレミングハウスのスタッフと偶然出会い韓屋で呑む、まるでご近所のように異国の街を楽しむ。
そして翌日からは、いよいよ韓国各地の村々を巡る旅がはじまる。つづく






